金券ショップの株主優待券を使って株主優待価格の航空券購入。株優代は科研費で落ちる?

平成29年度の科研費の公募が始まり、にわかに活気づいてきた我が国の研究機関の研究部門。
ちょうど講義も前期と後期のハザマ。ここで一気に研究計画調書を仕上げてしまえば楽なんだけど、
今って学会シーズンですからどうもそれどろではない先生も多いようで。

そんな中、現在すでに科研費を持っている先生から出張旅費についてあったのがタイトルの台詞。
金券ショップで購入した株主優待券で航空券を購入した場合、
航空券代は当然正規の運賃ですから認められますが、金券ショップの領収書は科研費で落ちるのかということです。

「そんなの落ちて当たり前だろ」というのは民間企業に勤める身内の台詞。
私も自分が科研費を管轄する部門の長であれば、「勿論OK」というところです。

ただ、現在はしがない一係員として、科研費の事務処理のお手伝いをしている身分のため、
我が大学の方針を伺うべく、旅費を管轄している部門に確認してみました。

すったもんだのあげく、我が大学では「OK」となりましたが、これは「NO」の大学もあるようです。
このあたり、どういう考え方になったのかを参考までに書いておきたいと思います。



そもそも株主優待券など使わなくても普通に航空券代は正規運賃で落ちます。
昨今は割引運賃で航空機に乗ることが当たり前になりつつありますが、割引運賃では様々な制約があるのも事実です。

国際線を正規運賃で乗るのは少々値が張りますが、国内であれば高くても片道5万円は超えません。
(乗り継ぎで島などに行く場合は別。)

普通運賃なら研究の都合や現地の交通事情などで予約した飛行機に乗れなくなっても便を変更できますし、
マイルも100%貯まる。経費で落ちるなら普通運賃を選択します。私なら絶対そうする。

ただ今回の場合、少ない研究費を有効に活用するため、出来るだけ旅費を安く上げたい
というのが先生の要望。
普通運賃で航空券を買うと使える研究費が大幅に減り、研究に差し障りがでてくるというのです。

また、前もって旅程を組めれば割引運賃のチケットを購入できますが、
忙しいさなかに相手先との日程調整をしながらいく出張なので割引チケットは売り切れる。
さらに、会合が長引いたりして、予約の便に乗れなければ航空券は買い直しで、
乗れなかった便の航空券代は自腹出費になる。

その苦肉の策として出てきたのが、金券ショップで株主優待券を買うことでした。


そもそも株主優待券とは?


株主優待券とは、株式市場に上場している企業が、自社に投資してくれる株主に対して与えることがあるもの。
株式を発行し、投資家から資金を募る場合、銀行の融資と違って、市場から無利子で調達できます。
企業はその調達資金を使って事業に投資するわけですから、投資家を広く集めたい。株価も安定させたい。
そのために自社へ投資してくれた人に対して、株主優待をはじめとした特典を与えることで、自社への投資を促す場合があります。

株主優待を実施すると個人投資家に人気がでるため、個人投資家の関心を引きたい企業や、
一般消費者に直結した事業を展開している企業は株主優待を実施しているところが多いです。

なかでも航空会社や鉄道会社の株主優待は大人気。
グループ会社で利用できる優待の他、無料乗車券や運賃が大幅に割引になる優待券がもらえたりします。

ANA、JALの株主優待券の場合、国内線の航空券代が半額で購入できます。
おまけに株主優待価格の航空券は、優待券の有効期間内であれば、座席の変更がきくのです。
(便によっては座席数に制限があります。)


株主ではないけど、株主優待券を使いたい。→金券ショップで購入。


この株主優待券ですが、本来株主様へのサービスの一環として発行している物です。
企業によっては株主優待券を記名式にし、株主本人以外は使えないようにしていたりしますが、
航空会社の株主優待券は無記名です。
航空会社もホームページ等で「どなたでもご利用いただけます。」とうたっています。

株主が自分で使ってもいいし、家族にあげてもいい。
さらにいうと、そもそも旅行など興味もない株主もいますから、この優待券はいわゆる金券ショップにも出回ります。

国内線の航空券を普通運賃で購入すると区間にもよりますが、30,000円以上かかるところが多いです。
それが半額で買えるのですから、3万円の区間だとすると15,000円です。
金券ショップで売られている株主優待券は需要や有効期限で前後する物の、だいたい5,000円くらい。
(ということは金券ショップの買い取り価格が4,000円くらいですかね。)

つまり、30,000円の航空券が金券ショップで5,000円の優待券を買って利用することで20,000円になる。
片道10,000円、往復だと20,000円安くなる計算です。

今時、20,000円あれば、かなりのものが買えます。専門書でも数冊購入することだってできる。
多額の研究費を獲得できるベテランの先生には微々たる額でも、若手には貴重な資金です。


研究費を有効利用するために金券ショップで優待券を買って、優待券代も研究費で落とせるか。


冒頭にも書きましたが、これ、我が大学ではOKになりました。旅費の管轄部署に問い合わせた時の答えはこうです。

「普通運賃で旅費を出すと、研究費の予算がオーバーして研究に滞りがでる。」
 (若い先生なので、科研費の配分額もふんだんにあるわけではありません。)
「先生は株主ではないため、株主優待券は持っていない。
 そのため金券ショップで株主優待券を購入し、航空会社から正規の優待航空券を買いたい。」
「株主優待券の購入代金と株主優待価格の航空券代を足しても普通運賃より大幅に安く、研究費が効率よく使える。」

担当レベルでは即答がでず(旅費は実費が経費で落ちるものなので、普通運賃で買う人がほとんどだろう)
係内で話し合った結果、もらった答えはこれでした。

「航空会社の方で、株主優待券を売買することを禁止する内規などがなければ認める。
 違法性がなければ、問題なし。」

違法性があれば金券ショップで売られているわけはありません。それは担当者も重々承知のはず。
だけど、そう言い張っても認めてもらえるわけはないので、やることはただ一つ。
航空会社に直撃です。


今回、利用する航空会社は日本航空と伺っていたため、JALのIRサイトや予約サイトをくまなく調べましたが、
「株主優待券はどなたでもお使いいただけます。」という文言はあっても、
売買をしてはならないという規約など出てきません。

株主優待を使って航空券を予約する方法などは懇切丁寧に書いてあるのですが。

これは電話して聞くしかないなぁ。と、考えたあげく、IR窓口に電話しました。
予約担当に聞いてもらちがあかないと思ったからです。


株主様に対し、株主優待券を売買を禁ずる内規はない。金券ショップで買ったものもどうぞ使って。


航空券予約窓口などと異なり、IR窓口への電話は一発で繋がりました。

IR窓口に電話をしてくるのは個人投資家などです。
いきなり、株主でもなく、投資家でもない、大学の事務員から電話がかかってきてさぞかしとまどったことでしょう。

当方としては、違法性があったり、日本航空側で転売を禁止しているのであれば、
研究費、いわゆる国民の血税を使った金額の支出を認めない方向でいるのだが、
果たして、御社で株主様に対し、内規のような物で、転売を禁止する規約などはありますか?

たぶんこれまでに受けたことのない質問だったと思われ、担当者も即答できずになんどか
上長と思われるような方に確認しておられましたが、最終的にもらった解答はこれ。

「株主優待券の転売を禁止するような内規はない。」
「株主優待券は株主様に限らず、どなたでもお使いいただけます。」
「いわゆる金券ショップ等でも販売されておりますが、株主優待券は無記名のため、
 金券ショップで販売されている優待券を使って、優待価格の航空券を買うことも可能。」
「つまり、問題はありません。」

日本航空のオペレーター様に、断言していただいたことで、これを担当係に報告し、
「じゃあオッケー」という話になりました。


ただし、うちの大学としては、旅費の精算の際には、航空券の領収書、金券ショップで購入した領収書に加え、
株主優待券を購入した証拠として、株主優待券のコピーも添えて提出せよという話で、
「え、株主優待券って、使った後も現物手元に残るんだけど?」と思ったのですが、
(どうも使った後に回収されると思ったらしいが、いまどきネット予約なんで。)
コピーを提出せよ、といわれたからにはコピーを提出してもらいました。
まあ、先生にも旅費が返還されるまでは現物を手元においといてねとゆってありますが。


ネットでだーーっと検索してみると、「科研費で認められるのは航空券代のみであり、金券代は認めません。」
と学内の旅費規程で認めないとしている大学もありました。

先生には「うちの大学ではOKになりましたが、他大学ではだめなケースもありますので、注意を!」
「私が問い合わせたのはJALなので、ANAに乗る場合はANAに同様の確認してください」と伝え、今回の騒動は終わりです。

この話を一般企業勤めの身内に話したら
「おくれてんな〜、企業だったら経費削減に金券使うなんていまや当たり前の話だ」
ときっぱり言い切られました。

私も個人的に鉄道会社の株主優待チケットを購入して使うことはありましたが、
航空券はマイルで出すか、割引チケットしか買ったことがなかったので、勉強になりました。
そうか、株主優待の航空券って便の変更がきくのか。これは使い勝手がいいなぁ。


旅費は不正使用がしやすいので、航空券代など領収書の提出が義務づけられていますが、
領収書の提出義務をなくすと、優待券を利用して、片道1万円ずつ個人的に猫ばばもできてしまう。
旅費で何百万円も研究費を不正使用した先生がおられましたけど、なるほどなと勉強になった出来事でした。


今回のケースのようにグレーゾーンにかかる場合は、逐一所属研究機関の担当に確認してくださいね。
うちの大学だって、担当が変わったらアウト!と言い出す可能性も高いし。
(変わらなかったら、来年の旅費マニュアルに追記されそうだ。)

金券代は旅費ではない!という人の考え方もわからなくはないです。
今の世の中の流れからは外れているけどね。

ただ、金券ショップで切手を買って領収書をとっておいて、換金する政治家もいるわけで、
使う場合は、確実に購入した物を、使った証拠が必要です。
そのあたりをきちんとできる人以外は使わない方が無難です。
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posted by もとじむ at 2016年09月22日 last update | 科研費の使い方・考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする