科研費の「基金化」について

平成23年度予算より研究費の複数年度使用を可能にするため、科研費の「基金化」が導入されました。

これって一体何が変わるわけ?と思われたことでしょう。
簡単に言うと補助金としてもらうよりも少しお金の使い勝手が良くなりました。
科研費の多くの研究課題は複数年に渡って研究を行っていく物ですが、補助金として予算が執行される場合、
常に1年ごとにお金を区切って使わなければなりません。

しかし、研究というのは4月1日から初めて、3月31日にきっちりと計画通りできる物ではありません。
研究計画調書を書いている段階では想定し得ないほどに順調に成果が出てくることもあるでしょうし、また逆もしかり。

そして、そうしたときに研究資金面で研究が滞ったりすることがないように、柔軟に対応しようと始まったのが基金化です。
これにより、年度にとらわれずに研究費の使用ができるよう日本学術振興会に基金が創られました。
基金化した科研費では複数年間の研究期間全体を通じた研究費が確保されているため、研究費を柔軟に使うことができます。

研究資金を柔軟に使えるというのはたとえばどういうことか。



■研究の進展に合わせた研究費の前倒し使用が可能になりました。

想定した計画以上に研究が進展して、1年かかって得られる成果が半年で完了したとします。
しかし、これまではその年の研究費がつきていた場合、次年度になるまで研究を進められませんでした。
それが基金化により、複数年間の研究期間全体を通じた研究費が確保されるため、前倒し請求ができるようになりました。

■事前の繰越手続きなく、次年度における研究費の使用が可能になりました。

研究費は年度単位で補助金としてうけていた場合、基本的に研究費は単年度で使い切らねばなりませんでした。
事情があり研究費を翌年度に繰り越すことは認められていましたが、繰り越し手続きが必要でしたし、
ましてや手続きをしても認められるとは限らないため、年度末の道路工事のごとく、
無理矢理使い切っていた人が大半だったでしょう。
かくいう私も単に使い切れそうにないからという理由の場合、使い切りを奨めていました。


また、日本の会計年度による制約というのはしばしば研究には不都合が生じることも事実です。

たとえば、日本では学校も実業界も4月始まりの3月の終わりという周期ですが、外国は違うわけです。
だから3月の終わりから4月の頭にまたがって行われる国際学会なるものもあるわけで、
そうすると「旅費は一体どうすればよいのだ?」という問題が生じます。

航空券は通常往復で購入する物だし、学会の参加費も日割りで請求なんてされませんから。
年度できっちり分けられるのはホテル代くらいなものです。

だから不自然だよなぁとおもいつつも、旅行代理店に領収書を分けさせたり、
参加費は前年度の予算でうまく付けたり、調整してもらっていた物です。

基金化によりそういう予算の施行上年度をまたがざるを得ない自体が生じても大丈夫になりました。


また、物品を購入するときも事務方から無茶を言われた記憶はありませんか?

大きな機材を発注する場合、発注から納品まで数ヶ月を要することがしばしばありますが、
発注した機材の納品が年度をまたぐことはまかりならんとか、

その年度の研究費で買う物はその年度内の研究活動に使わないと理屈に合わない。
だから年度が差し迫った頃に耐久備品を発注するのは受け付けないとか。

高額な機材を購入するときは研究の進展などお構いなしに、何ヶ月も前に購入手続きが必要だったはず。
「機材の発注は12月末までしか受け付けません」って、研究は3月まででしょ〜?と。

また、年度初めの物品の購入もそうです。
書類の都合上、4月を過ぎないと発注できなかったりして、そうすると機材の納品が5月とか6月とかになる。
大型機材が来ないことには始められない研究などは、その間、何もできなくなるわけですね。

採択された初年度はそうなっても仕方ないけど、次年度以降についてはもうちょっと融通がきけばと誰もが思っていました。
基金化される前はお金が入ってくるかわからないのに、つまり内定通知が届いてもいないのに
事務方が機材の発注なんてしてくれなかったと思います。


そういった不都合が軽減されます。

でも研究課題によって研究期間は2年なり、3年なりと決まっていますので、
最終的にはきっちりと終わるよう、研究計画に沿って組み立て直すのは忘れないでください。
研究が進んで、研究費を前倒しにしたからといって、総研究費を増やしてもらえるわけではありません。


ところで、現在、国の予算の様々なものが基金化されており、使い勝手が良くなっているようですが、
反面、基金化したが故に、もらった方が不正な使い方をした場合、問題が深刻化するようです。

単年度予算で補助金を配っていたときは、不正をした人には翌年度は渡さないという措置もとれますが、
基金化してまとめて渡してしまうので、国側は勧告するくらいしかできないとかなんとか。

2011年に起こった東日本大震災は記憶に新しい出来事でしたが、
震災の復興支援金が復興と関係ないことに予算が使われているのを止められないのも
基金化してしまったが故だという話もワイドショーネタになっていました。
(科研費の場合、同じように当てはまるかどうかはわかりませんが。)

複数年度にまたがって予算が使えるからといって、ろくに研究を進めずに研究費を使い残し続けたり、
変な使い方をする研究者が増えると、せっかく使い勝手が良くなった予算がまた元に戻るかもしれません。

基本的に研究計画に沿って研究を行うことは大前提として、不測の事態が生じたときに
対応できるようになったという心づもりで予算を使っていくのがよろしいかと思います。

たいていこういうのは一部の不真面目な人のせいで、改悪されて行くものですのでご留意されたし。
そのために事務員がうるさくいうのは我慢してくださいね。

先生方が憎くてゆっているのではありません。彼らはまじめなだけなのです。
(いや、そうでないひともいるか。)


基金化されていない研究種目はどうするか。


科研費の全ての研究種目で研究費が基金化されているわけではありません。
そのため、平成25年度より、基金化されていない研究種目の研究費を柔軟に使えるようにするため、
「調整金枠が導入」されました。

以前から事情により使い切れなかった補助金を繰り越し申請することは可能でしたが、
調整金枠の導入で、前倒しで追加配分を受けることも可能になっています。


「調整金」によって可能となる前倒し使用や次年度使用は、補助金のみによって研究費が交付されている研究課題が対象。
 ・特別推進研究、新学術領域研究、基盤研究(S・A)、研究活動スタート支援の研究課題
 ・平成22年度以前に採択された基盤研究(C)、若手研究(B)の研究課題
 ・平成23年度以前及び平成27年度に採択された基盤研究(B)、若手研究(A)の研究課題

こちらは基金化に比べると手続きが必要になります。

[研究費の前倒し利用]
当該年度の研究が加速し、次年度以降の研究費を前倒しして使用することを希望する場合には、当該年度の調整金から前倒し使用分の追加配分を受けることができます。

[研究費の繰り越し利用と調整金としての利用]
研究費を次年度に持ち越して使用する場合、基本は繰越制度を利用する。
繰越制度の要件に合致しない場合や繰越申請期限以降に繰越事由が発生した場合、
いったん、国庫に返納した上で、次年度の調整金から原則として未使用額全額を上限として配分を受け、使用することができる。


詳しくは文部科学省の該当ページをご参照ください。
科学研究費助成事業−科研費− > 「調整金」について

ただし、これは採択がきまった後に考えるべき事ですので、
研究計画調書を作成する段階で、自分の申請する研究種目が基金化対象なのか、
補助金対象なのかを気にする必要はありませんし、
ましてや研究を計画通りに遂行できればなんの問題もありません。あしからず。

posted by もとじむ at 2015年09月13日 last update | 採択された後に必要なこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする