交付内定通知が届いたら:交付申請書・交付請求書の作成と提出

以前は科研費も特別推進研究、基盤研究(S)など、交付金額が大きく、採択件数が少ないものから
採択課題が決定していきましたが、近年はほとんどの研究種目で4月1日付で内定が通知が届きます。
特に去年の秋、初めて科研費に応募した先生にはどきどきの瞬間ですね。

科研費は応募件数が非常に多いため、交付申請も所属研究機関ごとにとりまとめが必要でしたが、
採択通知も課題ごとではなく、所属の研究機関の代表者宛でまとめて通知がやってきます。
それも採択された課題のみが掲載された一覧表がぺらり。載ってない課題は不採択ということです。

応募の時に「不採択だった場合、自分の評価を知りたいですか?」と審査結果の開示を希望することができましたが、
採択通知が送られてくる時にはこれは届きません。
この結果の開示はほんとに忘れた頃に届きます。(事務担当者もたいがい忘れてます。)

「採択通知がきた!研究開始だ!」 いえいえ、そうは問屋がおろさないのが公的資金です。
通知が届いたら「研究資金の交付を受けさせていただきます。」って改めて手を上げないといけないのです。
採択通知と同時にお金もついてくるわけではないのです。

採択通知が届き、研究をやるぞ!という意思があった場合、交付申請書という書類を作成せねばなりません。
交付申請書を提出し、その申請が認められたところで、初めて交付が決定するというのが正式な流れです。



内定通知から交付条件を確認する


科研費はそれぞれの研究種目に合わせた研究計画を立てて「研究計画調書」を作成して提出しました。
そして、その研究計画調書は、研究種目ごと、分野ごとに2段階の審査を経て交付が内定します。

研究計画調書を作成するときは研究資金の使い道などについてはある程度ざっくりとしたイメージで作られているはず。
そして、その資金の財源が税金ですから、予算については審査員も文科省もそのまま通すわけにもいきませんし、
補助金の名目である学術研究の発展のためにはより多くの研究者にチャンスを与えねばなりません。

したがって、審査員の判断で「この課題ならこのくらいの経費でできるだろ」と予算は削られます。
これまで私の経験の範囲では削られなかった課題は見たことがありません。
中には「ぎりぎりの予算で出したんだ!削られたら研究ができないじゃないか!」という先生もいるのでしょう。
そんなときの文科省、学振の言い分はこうです。

「各分野の専門家である審査員の先生が内容を見た上で、その金額で研究ができると判断しています。
 もし、その予算内で研究の遂行が不可能であれば、科研費を辞退してください。」


つまり交付内定通知に記載された内容が不服であれば、研究費はもらえません。
国家プロジェクト相当の億単位の研究であれば事前に金額や内容にまでつっこんでくるかもしれませんが、
数百万〜数千万円までの研究であれば、申請した研究経費が減額されている位で内容はとやかく言われません。
内容でとやかく言わねばならないような研究は最初から通らないということです。

内定通知に記載された条件で問題なければ、その内容を元に交付申請書を作成します。

交付申請書を作成する。


「内定通知が届く=研究開始」とはいきません。「研究資金の交付を受けます!」という意思表示が必要です。
そのために提出するのが交付申請書です。
科研費は研究者に対して交付される物ですが、管理業務は研究機関が行うことが条件です。
研究機関に交付される物ではないため、研究機関側としては扱いにくいお金の色ですごく面倒なのですが、
ともかく事務処理から経費管理までのすべてを所属研究機関を通して行います
(そのため、文科省指定の研究機関に所属していない研究者は応募自体ができません。)

内定通知に記載された研究経費の範囲内で改めて研究計画を練り直し、作成するのが交付申請書です。
予算が減額されたら減額された範囲内で研究計画を組み直さねばなりません。
場合によっては年間の研究計画もすこしずれが生じる可能性もあります。
また、研究計画調書を作成した時点ではなかった、新しくて性能のいい機材も発売されているかもしれません。
研究計画調書ではあくまでも「計画」でしたが、ここではより実際に即した内容で書きます。

ちなみに財源が税金ですから、当然、日本国民に使い道は公にされる必要があるわけで、
この申請書に書かれた内容は広く公開されます。


交付申請書は奨励研究、研究成果公開促進費、特別研究員奨励費を除いた研究種目については
すべて電子申請システムにログインし、研究内容等を入力して作成します。

しばらく科研費を採択されていなかった先生は要注意です。

必要項目を入力し終わった後は電子申請システムよりデータを送信。
研究計画調書を提出する時はこれで終了でしたが、交付申請の時はここで終わりではありません。
入力したデータを元に研究計画調書を出力し、プリントアウトして、押印してください。
そしてその書類をご自分の所属研究機関を通して提出します。

お金のやりとりが生じる。要するに国と研究者の研究契約みたいなものなので、はんこがいります
はんこもシャチハタじゃだめです。朱肉を使ってください。
研究計画調書の提出のように電子的に書類をアップロードして終わりではないので注意が必要です。


交付請求書を作成する。


交付申請書は研究をこのように進めます!という研究のやり方やお金の使い方を簡単にまとめた書類です。
科研費の交付を受けるためには交付申請書の他にもう一つ、交付請求書も提出が必要です。

こちらは補助金の交付をお願いするための手続きです。「お金ください!」って頼むための書類。

震災の復興支援の補助金などでも話題になりますが、国の助成金の中には機関が研究経費を立て替えて払い、
領収書など必要な書類をすべてそろえて、チェックを受けてから後払いで補助金がもらえるというものもあります。

科研費は、研究を始める前に概算払いで先に研究費を交付してもらえます。
概算払いで補助金を先に払ってもらうために必要な申請書が交付請求書です。
研究代表者が個人名で、文部科学大臣もしくは日本学術振興会理事長宛に出す請求書です。

この書類も奨励研究、研究成果公開促進費、特別研究員奨励費を除いた研究種目については
すべて電子申請システムより入力するようになりました。

入力後、データを送信。その後、書類をプリントアウトして、押印したのちに所属研究機関を通して提出します。
研究計画調書は電子的に申請すれば提出できましたが、さすがに国からお金をもらうための請求書なので、
印鑑がないと研究費を交付してもらえません。(シャチハタは不可。)


正式な採択通知が届く前に研究費は使い始められる。


交付申請書、交付請求書を作成して、所属研究機関を通じて提出した後は、不備がなければ採択決定です。
正式な採択通知が届くのは交付内定通知が届いてから2ヶ月くらいたった頃です。

6月頃に日本学術振興会から電話があるとどきっとしましたが、たいていは交付申請書の軽微なミスで、
そのことが原因で科研費の交付が延期されたり、中止になったことはありません。
誤りがあれば、修正して再提出で済みました。


国の予算は4月1日から動く物ですので、内定通知が来て、科研費の交付を受ける意思があれば、
その年の4月1日にさかのぼって、科研費を使うことができます。交付決定を待つ必要はありません。

しかし、当然ですが、いくら科研費が概算払いをしてくれる予算だとはいえ、交付請求書の事務処理が
学振や文科省で終わらない限り、お金は振り込んでもらえません。

お金が振り込まれるまでの間は研究者自身が立て替え払いをして領収書をとっておいたり、
所属研究機関を通して業者に売り掛け払いで処理してもらったりする必要があります。

科研費の管理の仕方はそれぞれ所属研究機関ごとに決まりがあるはずです。
研究資金が振り込まれるまでの間の資金の使い方はくれぐれもご自分の所属研究機関の担当者に確認してください。
(間違っても文科省や学振に電話しないように。「自分の所属研究機関に聞け」と言われるだけです。)

科研費は所属研究機関が管理をしないといけないのに、お金は研究者自身の物。
それでいて研究者個人の所得ではないという複雑で、面倒な種類のお金なのです。
(だから普通の研究費は所属機関の経理部が管理してくれるのに科研費だけ別口座で管理したりするんですよ。)

普段、研究機関から配分されている研究費と同じ調子で使うことができない場合もありますから、
内定通知が届いて、すぐに研究始めたい!と思ったら、真っ先に所属研究機関の担当者に問い合わせましょう


ちなみに科研費で購入した物品は購入後ただちに、研究者の所属機関に寄付しないといけません。
つまり、お金は研究者自身のものなんだけど、購入した物品を私物にしてはだめってことで、
購入品は所属研究機関の財産になるのですね。

このように資金の色、購入品の持ち主などが複雑で、いちいちめんどくさいのが科研費。
事務部門の各部署から煙たがられてしまい、「えー、それは経理の仕事でしょ〜」とか思っても
経理が「やりたくないからおまえのところでやれ」とか言ったりして、たらい回しにされる。
私が科研費の事務処理が嫌いだった理由です。

資金の色が変なので、経理で書類が残ってると、学校全体の決算の時に面倒だからやりたくない。
そんな理由で、ブーメランのように研究費の管理までやらされていました。
(機材の発注部門には「サービスでやってやる」と言われていたし。)

研究計画調書を出す方は先生方との連帯感もあって楽しいんですけど、いざ通ると事務側の押し付け合いが・・・。
ま、それは科研費に限りませんけどね。

補助金などの公的資金はその資金ごとに扱いが全然違うので、「あいつらはいつも面倒な頼み事をする。」と思われてたのは間違いないです。


平成28年度科学研究費補助金 交付申請関係ページへの主なリンク


交付内定までのスピードが速くなりましたね。半月くらい早くなりました。文科省も学振も努力されてるなぁ。
すでに所属研究機関からご連絡あったかと思いますが、以下に交付内定に関する主なサイトをリンクしておきます。
各研究種目の「交付内定について」のリンク先をクリックすると交付申請書の様式なども準備されてます。

※28年度分がアップされ次第、リンクを更新します。

■日本学術振興会 科学研究費助成事業

○平成28年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(新学術領域研究、基盤研究、若手研究、研究活動スタート支援)の交付内定について

○平成28年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)(基盤研究(C)、挑戦的萌芽研究、若手研究(B))の交付内定について

○平成28年度科学研究費助成事業(基盤研究(B)及び若手研究(A))(平成24年度から平成26年度採択の研究課題)の交付内定について

平成28年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(研究成果公開促進費)の交付内定について

平成28年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(奨励研究)の交付内定について

交付申請に係る様式:○使用ルール・様式集


■文部科学省 科学研究費助成事業−科研費−
posted by もとじむ at 2018年04月02日 last update | 採択された後に必要なこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする