審査員は3年で入れ替わるのでしつこく出せば3年目にお情けで通る?

科研費はピア・レビュー(=研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証)を経て審査されます。
かつては一度審査員になることを了承すると、その分野での科研費の審査員を3年間になっていました。
現在は、2年サイクルで審査員が入れ替わります。

ある時、科研費の提出締め切りギリギリになってとある先生から電話がかかってきました。
「どーしても間に合わないから、ほんの数日だけ待ってくれない?」
「いいですよ。ぶっちゃけていえばほとんどの先生が締め切り日に提出してこられますので、当日中にチェックしきれないんですよ。
 だから1人や2人が数日遅れたところで、事務取扱としてはあまり問題にはなりません。」

先生の数が多い大学ではこんな要求飲めないと思います。
一人が二人になり二人が三人になり・・・と締め切りを守らない人が増えていって収拾がつかなくなる。
科研費は研究組織として一括提出が原則ですから、一人のために全員が提出出来ないなんてことになりかねないからです。
(※現在は電子申請なので、さくっとボタン一つで提出完了です。)

でも弱小大学としては少しでも多く科研費を取りたいわけです。
「どうしても出したい!」とわざわざ電話をかけてくるということは研究に対する情熱も持っておられるわけで、
実際、こういう先生ほど、通るんですね。採択率はかなり高かったです。
大きな声で「締め切り過ぎてもいいよ」なんていうと他の先生に申し訳ないので、「内緒ですよ」と念を押すのは忘れませんでしたが。

で、この先生、結局、翌年の春に応募課題が採択されました。その時に言われたのがタイトルの台詞です。

しつこく出せば審査員はお情けで点数を高くしてくれるのか?


4月になり科研費の内定通知が届きますと、その「締め切りを数日伸ばして欲しい!」と言った先生の応募課題も通っていました。
すると早速「ありがとう!待ってくれたお陰です。」とご挨拶に見えて、言われたのがこの台詞。

「科研費って3年で審査員が入れ替わるでしょう?だから今年は何が何でも出したかったのよ。
 しつこく出していると3年目は「そろそろ通してやるか」って審査員が思うらしいのよね。」


その台詞をきいて、「えー。そうかなぁ?」と首をかしげたものです。
まあ、実際その先生も自分が審査員をしていた時に、そういう気分になったのかもしれませんが。

確かに科研費はピアレビューのため、分野によっては顔見知りばかりを審査することにもなるでしょう。
でも審査をしていて、1年前に出された他人の研究内容を審査員が憶えているとすれば、
それはそれだけ研究内容が素晴らしかったり、逆にひどかったり、という意味で印象深かったんだと思います。

そもそも採択されなかった場合、元の研究内容を見直して次の応募では研究計画調書をブラッシュアップしますでしょう?
大学の先生っていつでもてんてこ舞いなくらいに忙しく走り回っているのですから、最初の書類はいい加減になることもあります。
その元の書類を見直して、プランを練り直したり、文章を組立直したりするのですから、2回目はもっと良くなっているハズです。
そうやって何年も磨きをかけて来ているからこそ、研究計画が印象にも残るし、説得力がどんどん増すと思うのです。
つまり先生のたてられた研究計画が素晴らしかったから、評価された。採択となった。だけだと思います。

実際、私は全く同じ研究で10年間出し続けて10年間ずっと通らなかった先生も知っています。
3年目だろうと、そうでなかろうと、通らない物は通らないんです。お情けで通るのなら3回通ってないとおかしい。
(ちなみにこの先生、11年目か12年目に通りまして、あまりのことにおろおろしておりました。
 「初めてなんで!教えてください!」と殊勝なこと仰っていましたが、補助金というものの性質をよく知らないんで事務処理大変でしたけど。お金の使い方が・・・。)

ちなみに冒頭でも書きましたが、現在は科研費の審査員は2年で入れ替わります。
(※平成30年度から審査方法も変わります。そのうちこちら書き換えるかも。)

さらに日本学術振興会の方で審査委員を選出するための研究者のデータベース化も進められています。
学協会などからの推薦以外に科研費に過去に採択されたことのある研究者などが登録されており、
「知り合いを審査するから甘くなる・・・」ということが起こらない様にという配慮もあるのかもしれません。

審査員の名前は、2年の審査期間が終了した後に公表されます。
自分の応募書類をどんな方が審査員をしていたのか、覗いてみるのも参考になるやもしれません。

■日本学術振興会>科研費審査員名簿



posted by もとじむ at 2017年09月12日 last update | 研究者が噂する審査都市伝説? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする