研究費の考え方、組立て方。

科研費の研究計画調書を書くのに慣れてない方から次のようなことを言われたことがあります。

まず「たった1部の計画調書を書くのに、資料が沢山ありすぎる。どこから手を付けていいのかわからない」ということ。
慣れれば簡単なのですが、初めて公募要領を見る人にとっては”研究種目”だの、”区分”だのいろいろあって混乱するようです。

そして、様式のページ数の多さに「う。」と気後れ。こんなにいろいろ書かないとだめなの〜?と思う。
(でも補助金によってはもっと難解な資料を作らないとだめだったりもしますけどね。)

さらに「やりたい研究」は本人の心の中で明確なので、研究内容を語ることは得意なのだけど、
それ以外のところが何のためにあり、どう組み立てるべき物なのかがわからないコトもあるようです。
そこで、「研究経費」についての科研費の基本的な考え方をここでは書いていきます。

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科研費には、研究に直接関係する「直接経費」と研究に間接的に付与される「間接経費」があります。
このうち、研究者が直接関係するのは「直接経費」で、研究計画調書を組み立てる時に申請するのはこれにあたります。

申請対象となる経費(直接経費)


研究計画の遂行に必要な経費(研究成果の取りまとめに必要な経費を含む。)が対象です。

研究計画調書には、この直接経費をさらに「設備備品費」「消耗品費」「旅費」「人件費・謝金」「その他」に分けて、
その用途ごとに何に使うのか、細かい項目と金額を列記することになります。

研究経費は、基本的には科研費で交付された研究費で応募する研究テーマが全て完結するという考え方をします。
他の省庁等から受けている補助金が足りないので「足りない分を科研費で」という考え方は認められません。
応募した研究テーマは、科研費の経費だけで全てやり遂げることを前提に研究費の細目を組み立ててみましょう。
そういう意味で、応募研究を行うために必要な物を一から十まで請求するのが原則です。

※原則としている理由は、このページの下部で説明しています。


「パソコン一つあれば、本さえ買えればそれで研究ができるんです」という方がおられるとします。

これは科研費で応募の対象としない「単に既製の研究機器の購入を目的とする研究計画」にあたります。
例えその既製の研究機器を使って、研究をやるにしても「物が欲しかっただけ」と捉えられます。

さらに、「研究期間のいずれかの年度における研究経費の額が10万円未満の研究計画」も認められません。
10万円未満しか研究費がいらないのであれば、そのくらい自分でなんとかできるでしょって話かと・・・。

このような前提を踏まえ、応募する研究テーマを研究から成果報告までキッチリまとめるのに必要な費用を計算してください。

パソコンでシミュレーションをする研究なら、パソコン以外にバックアップメディアもいるでしょう。
今持っているソフトウェアを流用できるのであれば、ライセンスのみを研究期間分購入する可能性があるかもしれません。

研究の参考にするために他者の論文を図書館に複写請求をしたりしませんか?
プリンターのプリント用紙やインク代も消耗品として必要ではありませんか?

研究成果がまとまると論文を投稿したり、学会で発表もするでしょう。
また、応募研究に関係する限り、資料収集のための学会参加費用も認められます。
国内の学会であれば国内旅費、国外で行われる学会であれば外国旅費として申請できます。

一人で行う研究だとしても、実験補助や資料整理を所属研究室の学生に手伝って貰うかもしれません。

と、このように考えると、「研究」としてテーマを完結させるまでには必要な物はどんどん出てきます。
逆に言うと、こういう物は他の経費で買えるというのであれば、科研費に応募してはいけないのです。


平成20年度以降は経費の混同使用も認められるように。


以前は科研費は経費の混同使用は認められておらず、科研費の応募テーマは、科研費交付された研究資金でまかなうのがルールでしたが、近年、それが緩和されてきました。

元々、旅費などは同じ方面へ複数の目的でいく出張を合わせて行うことで、旅費を効率よく利用することが認められていましたが、
その他、科研費と使途の制限のない他の経費との合算使用や、複数の競争的資金制度の合算による共用設備の購入が可能になりました。

参考ページ:「複数の科研費による設備の共同購入が可能に。

所属している研究機関から毎年決まった額の研究費がもらえるとわかっている場合、
その研究費と科研費を合算して利用することで、効率的に資金を使うことができます。

設備についても、他の研究者や他の研究テーマでも使える設備があった場合は、
資金を効率よく利用するために合算利用ができます。


ただし、科研費の採択される基準はあくまでも研究の中身です。

文科省とか、税金を納めている国民にしてみれば、研究費を計画的に利用していてえらい!と思うところですが、
研究内容が審査員に認められなければ元も子もありません。

研究資金の混同使用に関しては、研究計画を立てた後、応募しようとしている研究課題と金額的に折り合わないときなど、
研究資金を調整しなければならくなって初めて考えてみるので遅くないと思います。

優等生になって効率を考えて資金を減額しまくっても、採択されたときに計画通りの研究費がもらえるとは限りません。
研究費減らされて研究が成り立たなくなる方が問題です。


例えば当初計画では同じ用途で使える安価な機材Aを計画に入れておいて、
採択後に新しく発売された高機能な機材A’を購入したくなった場合、機材Aの予算との差額を
所属研究機関から「研究のために自由に使え」と言われている研究費があるのであれば、
その研究費と合算して購入するとか、そういうやり方がベターかなと思います。


計画通りに研究を遂行できるか不安で資金計画が立てにくい。



「研究は計画通りに実行出来るかどうかわからない!」と思われるかもしれませんが、
研究計画の中には「うまくいかなかった時の対処法も書け」と書いてありますし、計画段階である程度、
そのようなことも想定しなければなりません。


※平成30年度より、この欄なくなりました。研究者も失敗を想定して研究計画を作るわけではないので、この欄には困っていたのかも。

研究経費に関しては、交付対象が「研究」というものですので、文科省も柔軟な考え方を持っています。

まず、大前提として、申請された金額がそのまま通るわけではありません

研究計画調書の内容を審査する段階で、審査員に「この内容ならこのくらいの金額でできる」と思われた場合、
申請した研究費は削られます。
というか、金額調整をされずに満額通る例はみたことがありません。

ということは、通った後、改めて審査員が決めた内定金額内で研究費の使い方を組立てなおすのです。
そして「こんなに削られたらこの研究は絶対にできない!」と思ったら科研費を辞退しないといけません。

さらに、交付される予定の研究費の総額は応募の初年度に全ての研究期間分内定されるのですが、
年度ごとに「交付申請書」を提出する必要があり、年度の始めに改めて1年分の研究内容と研究費の使い方を申請します。

その際、研究計画が大幅に変わる様なことがなければ、経費の使い方を変更することも可能です。
研究の進み具合が遅くて学会発表が間に合わない・・・などという事態がでてきても大丈夫です。
文科省も「学術研究」の性質を理解しているからに他なりません。


というわけで、研究経費を組み立てるときは細かいことを深く考えず、まず、応募する研究テーマを遂行するのに必要な物を全て上げてみて、その金額を計算してみてください。

請求している研究費が研究内容に見合った額であれば、審査員もさくっと認めてくれます。


科研費で対象とならない経費


科研費で対象にならない経費は次の様な物があります。

◇ 建物等の施設に関する経費
   科研費は対象となる研究機関に研究を生業とするものとして雇われた人が対象です。
   当然、その研究テーマを遂行するための研究環境が整っていることは前提条件です。
   ただし、直接経費で購入した物品を導入するのに必要となる軽微な据付等のための経費はOKです。
 
◇ 補助事業遂行中に発生した事故・災害の処理のための経費

◇ 研究代表者又は研究分担者の人件費・謝金
   自分の給料はでません。手伝ってくれた人に謝礼を払うことはできます。

◇ その他、間接経費を使用することが適切な経費
   間接経費は、科研費の交付を受けた研究者のいる研究機関に交付されます。
   間接経費の使われかたは各大学で異なります。(普通は研究者自身が使うことはできません。)


参考:経費うんぬん以前に、公募の対象とならない研究計画


次の研究計画は公募の対象にはなりません。
科研費は「基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を格段に発展させることを目的とした競争的資金」なので、
その目的から逸脱するする研究計画は最初から公募の対象にはなりません。

◇ 単に既製の研究機器の購入を目的とする研究計画
  研究ではなく、単なる物品購入費であると見なされる。

◇ 他の経費で措置されるのがふさわしい大型研究装置等の製作を目的とする研究計画


◇ 商品・役務の開発・販売等を直接の目的とする研究計画(商品・役務の開発・販売等に係る
市場動向調査を含む。)

◇ 業として行う受託研究

◇ 研究期間のいずれかの年度における研究経費の額が10万円未満の研究計画


平成30年度公募分から研究経費欄の記述方法が大幅に変わりました。



これまで「研究費とその必要性」という欄は研究計画調書の中身の部分(MS-Wordで作成する部分)にありました。
そのため、ワードでタイプし、必要経費を自分で計算し、線を引っ張って各年度ごとに小計を出して・・・
と「こんなのエクセルなら簡単なのに!」という作業をワードで作成させられておりました。

その上で、Webからの入力項目の中に、計算値を転記しなければならなかった。
科研費の研究計画調書の表紙には、経費の一覧が掲載されていたからです。

内容をチェックしている事務からすると、この計算間違いや転記ミスが非常に多く、
提出された原稿をいちいち却下して、先生に手直しをしてもらっていたわけです。

平成30年度からようやくこのシステムが改善されました。
研究費に関することは全てwebからの入力項目になったのです。

数値を入れれば金額も自動計算されます。
「500万円以内に収めねばならない総額を計算してみたら510万円だった。」なんていう凡ミスがなくなります。

おまけに設備備品費や消耗品など、細かな物品を書く欄はしっかりと項目を別立てしてあって、
設備の設置機関や使用、単価など、記載漏れをすることがなくなります。
この欄、絶対に設置機関を書かない先生がいるので、手直ししてもらうの大変だったんですよ。
特に自分一人で研究をされる方にとっては、設置機関なんて自分の所属大学以外あり得ないので、見逃すんですね。

事務局のチェック項目は大幅に減りますね。これは助かります。

詳しくは、文科省の説明会資料がわかりやすいので、こちらご覧ください。
下は、抜粋させて頂いた画像です。

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posted by もとじむ at 2017年09月22日 last update | 研究計画調書作成のポイント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする