「研究費の応募・受入等の状況 」の書き方

科研費の応募書類に「研究費の応募・受入等の状況・エフォート」という記入欄ができてから10年くらいが経過しました。
この欄にもそろそろ慣れてきた頃かなということで、平成30年度よりまたいろいろ変わってきました。

平成29年度まで、科研費の審査は原則的に2段階審査でした。
第1段審査を通過すると、今度は第1段審査の評価を基に総合的な調整を行う「第2段審査」が行われます。
研究費の応募・受入等の状況 」はこの第2段審査で審査資料として使われるページでした。

平成30年度より、審査方法が研究種目ごとに変わっているため、細かなことは追々書いて行ければいいなと思いますが、
審査方法が変わろうと変わらなかろうとこの項目が作られた趣旨は、同じです。
「研究資金の不合理な重複や過度の集中にならず、研究課題が十分に遂行し得るかどうか」を判断する際に参照する項目です。

このページは「研究計画はよく書けているし、学術的価値がある研究」と一定の評価をされた研究が通る次の関門

他に多くの仕事や研究を抱えている場合、採択されても研究する時間を作れるとは思えなかったりします。
また、まれに似た様な内容の研究をあちこちの省庁の補助金に応募して、お金を二重三重に貰おうとしている不埒なかたがおられるのです。
著名な先生になると「研究分担者になって!」という頼みを安易に引き受けてしまい、
気がつけば、現在進行中の研究を大量に抱えていたりすることも。

研究費の応募・受入等の状況・エフォート」は、応募者の置かれている研究環境や、
応募研究を遂行し学術成果を出せる状況にあるかどうかを判断する材料として使われます。

研究費の応募・受入等の状況・エフォートの記入はweb入力項目になりました


この項目はこれまで研究計画調書上に記載していましたが、平成30年度公募分より、web入力項目になりました。

web入力項目、作成・入力要領を確認すると、

17.研究費の応募・受入等の状況
本欄は、「研究資金の不合理な重複や過度の集中にならず、研究課題が十分に遂行し得るかどう
か」を判断する際に参照しますので、正確に入力してください。本研究の研究代表者の、応募時点に
おける「(1)応募中の研究費」、「(2)受入予定の研究費」、「(3)その他の活動」について
入力及び確認をしてください。
・「(1)応募中の研究費」の欄の先頭には、本応募研究課題について入力してください。
・「(1)応募中の研究費」、「(2)受入予定の研究費」欄には、科研費のみならず他の競争的資
金制度についても入力してください。
・所属研究機関内で競争的に配分される研究費についても、「(1)応募中の研究費」又は「(2)
受入予定の研究費」に入力してください。
・所属研究機関内で、研究活動等を職務として行うため一律に配分されるような基盤的経費について
は、「(1)応募中の研究費」又は「(2)受入予定の研究費」に入力する必要はありません。
そのような経費を活用して行う研究活動等のエフォートは、「(3)その他の活動」に含まれま
す。また、科研費の連携研究者として参画している研究課題に係るエフォートは、「(3)その
他の活動」に含まれます。
・日本学術振興会特別研究員(SPD、PD、RPD)であって、平成30年度の特別研究員奨励費
の受給を予定している場合には「(2)受入予定の研究費」に入力してください。なお、日本学
術振興会より毎月支給される研究奨励金(研究遂行経費)については、入力しないでください。

「(1)応募中の研究費」欄及び「(2)受入予定の研究費」欄は、入力画面左側の「追加」ボタ
ンを必要な回数押すことでデータ入力欄が表示されます。使用しないデータ入力欄(入力したが使用
しない場合や全く入力しなかった場合)については、左側の「削除」ボタンを押してデータ入力欄を
削除してください。


とあります。長いですね。

記入要領の指示はさらにこと細かい指示があり、混乱しますが、内容は割とシンプルです。


自分のありとあらゆる仕事を全て総ざらいする。


このページのポイントは「研究資金の不合理な重複や過度の集中にならず、研究課題が十分に遂行し得るかどうか」という点です。

科研費は1人1課題しか応募出来ないわけではありません。
このHPでは基盤研究(C)の研究計画調書を元に説明をしてきたわけですが、基盤研究(C)に応募したとしても、
他に重複制限に引っかからない研究種目である「特別推進研究」に応募することもできます。
同時に複数の研究に応募することは、応募する研究種目によっては可能なわけです。

しかし、審査員は必ずしも基盤研究(C)と特別推進研究を兼ねているわけではありません。
下手なてっぽも数打ちゃあたるとばかりに、課題名を変え、似た様な研究で応募する不届き者がいないとも限りません。

科研費同士とまではいかなくても、他省庁に似た様な研究課題を応募している可能性もあります。

また、研究分担者として誰かの研究に参画している研究課題が来年も継続課題としてあるかもしれません。
通るかどうかはともかくとして、現在、他省庁の補助金にも応募しているかもしれません。

実際、いわゆる「文章力のある人」「実力のある人」はどこの補助金等の公募でも審査員に高く評価されるため、
気がついたら全ての補助金が採択されてしまった、ということも起こりえるのです。

さらにそれをしれっと黙って受け取ってしまう方がこれまでにおられたんですね。
公的資金ですから、特定の研究者、特定の課題にのみ集中して配分されるのは望ましくない。
そのような行為を応募の段階で抑制する目的もあるはずです。

府省共通研究開発管理システム(e-Rad)を活用しはじめたのも、「不合理な重複又は過度の集中」を排除するため、
応募内容の一部に関する情報を、他府省を含む他の競争的資金担当課間で共有しています。


この欄を書く際は、今書いている科研費の応募書類を含め、現在応募中の競争的資金は全て採択されると仮定します。
そして、それ以外に現在進行中で、来年も継続する競争的資金を使った研究があれば上げます
さらに所属研究機関内の仕事は、所属研究機関内で配分される競争的資金(共同研究費など)の他、
学生の論文指導や講義など、他の全ての自分の仕事を整理
します。

応募した研究課題が全て採択されたとして、自分の1年間の仕事をそれぞれの研究課題にどれだけ費やすことができるのか。
1年間の仕事全体を100%としたとき、それぞれの仕事にどのくらいの割合で時間を割くつもりか

これを一覧表にしてまとめるのが、「研究費の応募・受入等の状況」というページです。

自分の全ての仕事を、「応募中の研究資金」「来年も継続して研究することが決まっている資金」「その他の活動」に分けて整理し、
それぞれの研究課題名や役割、研究規模(研究経費)、研究の相違点についてまとめていきます。

「役割(代表・分担の別)」欄


当該研究者の役割が研究代表者等の場合は「代表」、研究分担者等の場合は「分担」を選択してください。

「資金制度・研究費名(配分機関名)」


科研費の場合には研究種目を選択してください。科研費以外の場合は「その他」を選択し、下段に研究費の名称と配分機関名を入力してください。

これは恐らく配分機関は文部科学省だと分かっていることと、研究種目を書くことで
重複制限に当たるかどうかが一目瞭然だからだと思われます。

「研究期間」


研究期間を入力してください。

「研究課題名」


研究課題名を入力してください。

「研究代表者氏名」


役割欄で「分担」を選択した場合、当該研究課題の研究代表者(もしくはそれに相当する者)の氏名を入力してください。

「平成30年度研究経費(期間全体額)(千円)」


平成30年度に本人が受け入れ自ら使用する研究費の直接経費の額(応募中のものは応募額)を
上段に入力し、併せて研究期間全体で自ら使用する総額(予定額)を下段に入力してください。
役割欄で「分担」を選択した場合、平成30年度に本人が受け入れ自ら使用する分担金の額(予
定額)を上段に入力し、併せて研究期間全体で自ら使用する分担金の総額(予定額)を下段に入力し
てください(分担金が配分されない場合は、それぞれ「0」を入力してください。)。

「平成30年度エフォート(%)」


本欄に入力する、「(1)応募中の研究費」、「(2)受入予定の研究費」及び「(3)その他
の活動」に係る全仕事時間を100%として、そのうち「(1)応募中の研究費」及び「(2)受入
予定の研究費」の研究活動等の実施に必要となる時間の配分率(%)を入力してください。「全仕事
時間」とは研究活動の時間のみを指すのではなく、教育活動等を含めた実質的な全仕事時間を指しま
す。
科研費において、重複応募は可能であっても、重複して採択されることがない研究種目(特別推
進研究等)を入力する場合は、「−」(ハイフン)と入力してください。
また、競争的資金制度により研究を行う場合には、当該研究活動に係るエフォートを必ず入力し
てください。本応募研究課題が採択された際には、改めてその時点におけるエフォートを確認し、エ
フォートに変更がある場合には、e-Rad 上で修正した上で交付申請手続きを行うこととなります。

「研究内容の相違点及び他の研究費に加えて本応募研究課題に応募する理由」


応募中又は受入予定の研究費と本応募研究課題の研究内容の相違点及び他の研究費に加えて本応
募研究課題に応募する理由について、焦点を絞って明確に入力してください。
なお、科研費の研究代表者である場合は、研究期間全体の直接経費の総額を当該欄に入力してく
ださい。

これは「同じような内容の研究をあちこちの競争的資金に応募してませんよ」ということを説明する欄です。
研究課題名だけでは審査員が判断しにくいので、この欄があると思われます。
(ずるがしこい人は中身は似ていて課題名だけ変えて応募することもあるでしょう。)

逆に言うと、研究の内容は全く違うのに、タイトルにはいるキーワードが似ていて、審査員が同じような研究だと受け取ると、
文科省のいうところの「不合理な重複及び過度の集中」と誤解を受ける場合もあります。
公募要領でもそのあたりの言葉の使い方は十分注意するよう促していますのでご留意ください。

なお、研究代表者として研究に参画している(参画する予定の)科研費については、
この欄に研究期間全体の直接経費の総額もしくは、研究費の総受入額を記載する必要があります。


ちなみにこの時点で記入するエフォートはあくまでも応募の時のエフォートです。
正式に科研費が採択された場合、改めて新年度の総仕事量のエフォートを算出し、e-Radを通じて申告します。
e-Radは他省庁の競争的資金でも使われるシステムなので、より公的資金が公正に使われるように
管理しやすくしたと考えられます。

文科省の説明会で公開された入力画面イメージです。参考まで。

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posted by もとじむ at 2017年10月14日 last update | 研究計画調書 各項目の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする