審査員の目を想像しながら計画調書を組立てる(2)

前のページで審査員に効果的に研究をアピールし続けて100%の採択率をほこっていた先生を例に出し、
どんな風に研究計画調書を書いていたかなどをご説明しました。
審査員はどんな人か、何を評価するかなどを想像し、客観的に自分の応募課題を分析してみましょう。といった内容です。
科研費の審査は科研費はピア・レビュー(=研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証)という形式をとっています。
審査員が同業の学者なのですから学者がどういう目で人の研究を見るかという視点に立って、
研究計画調書を書きましょうということです。
しかし中身がどうのという以前にもっと基本的なことで審査を自ら不利にしている方も多くいらっしゃいます
今回はその辺りについて書きたいと思います。

見た目の読みやすさも大事。書類を読む人の立場にたって考える。


科研費が欲しくてたまらないのだと思いますが、時々、自分の研究のことで頭がいっぱいで、
読む人のことを考えてないなぁと思われるものがあります。

文章を読む以前の話で、見た目で読む気が失せてくるような書類です。
見た目が悪いと、研究内容は素晴らしくても、隅々まできちんと読んでもらえなくなることもあります。

審査員をしている先生の多くは、研究活動に熱心で、これまでにそれなりの実績を残されてきた方です。
つまり日頃から忙しいのに、さらにその上で審査員を引き受けていると思ってください。

審査ですから自分が興味を持っている書籍や論文などを自分の意志で読むのとはワケが違います。
幾ばくかの謝礼も頂けますし、マジメな方ばかりなので、きちんと読まれているとは思われますが、
読みやすく整理されたものと、そうでないものでは理解度が違ってくるので評価に影響してくるはずです。

今回は、中身云々ではなく、見た目の視点で損をするのはどんなところかを書いてみます。

損をする書き方1:細かい文字で、行間も狭く、改行もしない。ひたすら文字を羅列する。


一番わかりやすいだめな例は、ものすごーく細かい字でびっちりとかき連ねてあること。
A4の書類なのに文庫本でも読んでるかのような細かい文字で書かれており、手に取った瞬間に読む気が失せます。
とにかく訴えたいことがいっぱいあることだけはわかるのですが、それを読む方は大変です。

毎年、科研費の応募時期になると、文科省が科研費の公募説明会を開催しますが、
その時に「11ポイント以上の大きさの文字等を使用するとよい。」とわざわざ申し添えていたほどです。

現在は、「研究計画調書作成・記入要領」や公募要領に、「11ポイント以上の大きさの文字等を使用してく
ださい。」としっかり書かれています。

細かい文字が敷き詰められた文章を読むのは面倒くさい。
読む方が少しでも苦痛だと感じる要素は最初から取り除いておいた方が賢明です。
内容じゃないところで、マイナスの印象を与えるのは損でしかありません。

逆にやたらに文字が大きくて行間を広くとっている書類になると、背景の白い空間が大きくて間が抜けて見えます。
お話をきいてみると、記載欄が広すぎてそれ以上書くことがないとおっしゃられる。
そういうときは「でしたら関連の写真や図解、イラストなどを載せてみてはどうですか?」と薦めることがあります。

審査員が応募書類に書かれたことを見聞きしたことが全くなかった場合、文章だけで想像するには限界があります。
そういう時に、写真でも絵でも図でも添えられていると、すっと頭に入ってくるからです。

文字は、小さすぎず、大きすぎず、適度なバランスなのが11ポイント程度ということですね。
ある意図を持って部分的に文字を大きくしたり、小さくしたりする場合は別ですが、
文章の場合は、やはり11ポイントくらいでまとめられることをオススメします。

■文字の大きさについての追記
 結局、採算説明会で注意を促しても小さい字で書く研究者が減らなかったとおもわれ、
 研究業績欄、研究経費欄、エフォート欄を除いて「11ポイント以上の文字等を使用してください。」と記入要領に但し書きがつきました。
 業績欄に関しては、業績が多かったり、研究組織の人数が多かったりすると欄が足りませんし、
 経費欄、エフォート欄も11ポイントで書くと書ききれない方が相次ぐため例外としてあるようです。

 研究計画を文章で説明する欄は読みやすいポイントを利用すること。という意味ですね。


損をする書き方2:下線や太字強調ばかりが多用されている。


文章の中で下線や文字の、フォントの変更などの視覚効果を使うと
強調されるべきところが強調されて、インパクトが強まります。

例えばこんな感じ。

■この方法を使うことにより、処理速度が10倍速くなる。
■この方法を使うことにより、処理速度が10倍速くなる。
■この方法を使うことにより、処理速度が10倍速くなる。
■この方法を使うことにより、処理速度が10倍速くなる。

10倍という数値だけでもインパクトがありますが、それをさらに強調して表示されているため、
「なんで10倍になるの?」とその前に述べたところを興味深く読んでもらえる効果があります。

このくらいの短い文章であれば、

この方法を使うことにより、処理速度が10倍速くなる

と、全文を強調して表現してもうるさくありませんが、太字や下線部分の割合が多すぎると
どこが強調されるべきところなのかがわからなくなってしまいます。

以前拝見した応募書類に、1ページの1/3くらいの文字の下に下線が入っている上に、
下線の部分が数行に渡って連続して続いていたものがありました。

例えばこんな感じです。

科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。


段落全てに下線が入っている文章が1ページの中に3つも4つもあるのです。

そこまでくると下線が一体何を意味しているのか理解しにくい。強調でもなんでもなくなってしまう。

書き手にとってはそこが研究のキモなのかもしれませんが、読む方は読みにくくてしょうがないのです。
特に文章を切らずに長く長く続けて書くタイプの方は要注意です。
文章が長いと1つか2つの強調すべき文章に下線を付けただけのつもりでも、全体的に下線だらけに見えます。

下線だらけ、太字だらけになってないか、確認してみてください。


損をする書き方3:やたらに色を使いたがる。


図やフローチャート、表などを挿入する時、背景や文字などをカラフルにする方がおられます。
文科省や学振にも「研究計画調書にカラーにしてもよいかどうか」と問い合わせがよく行くようで、
説明会では文科省から「特に制限を設けてない」=カラーにしてもよいとの説明がありました。

でもその回答には続きがありました。

「ただし、文部科学省が審査員に審査用の研究計画調書を配布する時はモノクロ印刷なので、
 カラーにしたことで逆に見にくくなるおそれがありますよ。」


それを承知でカラーで出すなら、どうぞ好きにしてってことです。

電子申請になる前は研究計画調書は審査員に配布される複本も含めて指定の部数を提出していました。
その為、研究計画調書に写真を貼り付けたりする先生などは、カラー印刷にこだわっていました。

現在は順当に電子申請への移行が進んでいますので、文科省や学振の方で出力していると思われ、
そして、そうなるとやっぱりモノクロ印刷なんじゃないのかなぁと個人的には思っていました。
カラーとモノクロでは印刷コストが全然違うからです。

そして、公募要領をよーく読んでみたら案の定、次のような但し書きがありました。

 研究計画調書はモノクロ(グレースケール)印刷を行い審査委員に送付するため、
 印刷した際、内容が不鮮明とならないよう、作成に当たっては留意してください。


審査員が電子申請システムにログインし、画面上で原稿を読んで審査をする・・・なんていうところまで進んでいれば話は別ですが、
たった1回の審査だけの為に審査員ごとにIDを振ったり、ある特定の課題のみに応募書類の閲覧許可権限をつけたり
といった作業はとても手間がかかりすぎるので、やるとは思えなかったんですよねぇ。
(印刷して配布するより、コストパフォーマンスもよく、セキュリティ上も問題ないなら話は別ですが。)

とはいえ、カラー原稿で応募することは、とくに制限されてはいません
大学によっては表を作成する時に、セルの背景を色分けしたほうがよいとかアドバイスをする場合もあるようですが、
審査員の手元に渡る原稿はグレースケール印刷になるため、色によっては色を付けた背景が塗りつぶされてしまい、
文字がつぶれて読みにくくなります。

正直、最初からモノクロの前提で、背景に網掛けを使ったり、写真も画像ソフトでモノクロ写真に加工して利用した方がよいと思います。
円グラフなら、背景を網掛け、斜線、白背景の黒文字、黒背景の白抜きなどで区別すればわかりそうですよね?

カラーにこだわるのであれば、ご自分でカラー原稿をグレースケール印刷で印刷してみて、
色わけの効果があるかどうかをチェック
してみてください。

このHPでは特に強調したい事柄は赤字にしたり、下線を入れたりして表現をしておりますが、ブラウザ上で読んでもらう前提だからです。
ブラウザで文字を指定した場合、使い手のパソコンの機種や設定によって見え方が変わってしまいます。
フォントも特に指定していませんので、強調したい箇所を強調する手段として色を変えて赤くしたりしています。
でも、赤い文字はモノクロで紙に印刷されると、黒よりも薄く印刷されてしまいますので、
結果的に強調される効果がなくなるどころか、色が薄い分、逆にマイナスの印象になりますよね。

これは私の個人的なやり方ですが、ワードを使って文章を作成するときは、基本的なフォントは明朝体にし、
強調したい箇所だけをゴシック体などの太めの書体を使い分けます。
ゴシック体は文字の一筆の太さが太いので、強調されて見えるのです。
明朝体は文字の一角、一筆だけでも細いところ、太いところが混ざっていて、全体的に細めの書体です。

全体が明朝体の文章の一部にゴシック体が混ざるとそこだけ浮き上がって見えますよ。


また、文字や図だけでなく、写真は特に注意が必要です。

これまでに見た原稿だと、医学系の先生が研究目的などに人間の内臓の写真を貼付していたりしましたが、
こういうものはモノクロだと細部がよくわからず、複写したり、性能が悪いプリンタで印刷すると写真がつぶれてしまい、
写真を貼付する意味がなくなってしまいました。

「どうしてもリアルな写真がなければ言いたいことが伝わらない!」とおっしゃられるので、
電子申請になる前は、自分でオールカラーの複本まですべて作って、のり付けまでして持ってきてくれました。

現在は電子申請。そして、グレースケール印刷であることを考えるとカラー写真は逆効果にもなりえます。
もし写真を添付した原稿をご自分でグレースケール印刷してみて、細部がうまく印刷できない場合は、
せめてカラー写真をそのまま添付するのではなく、画像処理ソフトでモノクロに変換してから貼り付けてください

ご自分でそのようなソフトをお持ちでない場合は、ご自分の講座または研究室に所属している学生に聞いてみてください。
必ず、画像処理ソフトを使いこなす学生がいるはずです。

ともあれ、写真やイラストはあくまでも研究計画調書をより分かりやすくする補助的な役割なので、
あまり意味がないのであれば、無理やり載せなくても、文章だけで勝負するのもアリですよ。

文科省でプリントするプリンターの種類とか解像度とかで印刷物の見た目もまったく違ってくると思うので、
写真を貼り付ける場合は大きめのものにするとか、強調したい部分を拡大して貼り付けるとか、工夫が必要です。

そして、図表の背景を色分けするのはあまり意味がないと思います。
(淡い色が複数使われてたりするとどれも同じように印刷されるか、ほとんど真っ白になって区別がつかなくなったりしますよ。)
網掛けなどのテンプレートをぜひ利用してみてください。
posted by もとじむ at 2017年09月15日 last update | 研究計画調書作成のポイント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする