審査希望分野の選び方

科研費を獲得するためには研究計画調書(申請書)の中身で研究をいかにPRするかが最も大事なことですが、
いくら研究計画調書をしっかり書いたとしても提出する審査分野を誤ると採択率は半減します。
科研費は自分の研究計画調書をどの分野の審査員に審査して貰うかを自分で選ぶことができます。

平成29年度公募分までは、公募要領に記載された「系・分野・分科・細目」のなかから提出する課題に見合った分野を一つ選ぶ方式でしたが、
平成30年度からこの「審査区分」が変更となりました。
審査区分が「大区分」「中区分」「小区分」と分け方が大きく区分けされ、応募する研究種目により、審査方法が変わってきます。
このホームページは、科研費に応募してもなかなか通らない方を想定して記事を書いておりますので、
文章のベースが基盤研究(C)や若手研究となっております。
基盤研究(B)および(C)、若手研究の場合、一番細かな審査区分である「小区分」で応募し、
同一の審査委員により2段階の審査が行われます。
これまで2段階目の審査では、審査員が変わり、会議体としての合議審査をしていましたが、これが全て電子システム上での審査になります。

応募するときの審査区分のポイントは、このような審査体制を理解した上で、
「どの分野の専門家集団が、一番この研究を高く評価するか」という目線で検討してみてください。


※この下の記事は、まだ平成29年度までの系・分科・細目表を例示に使っています。
 この後、記事を直します。ご了承ください。


例えば提出する課題が、外国語を即時翻訳出来る画期的なシステムの研究だとします。
(かなり前に話題になったスマホアプリに影響された例で学術研究とはほど遠いのは目をつぶってください。)

 ■総合系→情報学→ソフトウェア
 ■人文社会系→人文学→言語学
 ■人文社会系→社会科学→社会学

  
  内容によってこの辺りの分科から細目を選ぶことにしたとしましょう。

このシステムを研究しなければならない社会的な背景はなにか。
このシステムの研究成果がどこで役立つか。だれがそのような物を望んでいるか。
そのシステムができることで誰が一番胸を打たれるか。
「こういう研究は大事ね。」「面白い発想だ。」と一番理解してくれるのはどの分野の審査員か。

審査希望分野は自分を一番高く評価するのは誰かという目線で選びます。

例えば私の知り合いに雑音に関する研究をしている研究者がいました。
通常、音楽プレーヤーなどで雑音を感じなくするためには雑音を打ち消す逆位相の波長の音を被せて
雑音を聞こえなくするというのがその分野の技術者の間で常識なのだそうです。

その先生は逆の発想で雑音は消さずに耳に入っても気にならなくするという技術を考えました。
しかし、業界では非常識だったため、学会などでも常に反論を浴びせられ続けたそうです。
つまりその研究計画を提出しても同じ専門分野の審査員には評価してもらえない可能性が高かったのです。

結局、その研究は審査員が学者ではない、実用化向けの別の補助金に応募して採択をもらったのですが、
当時は携帯音楽プレーヤーにまつわる事故が社会問題化していたので、うまく社会学者を巻き込んで、
そちらの分野で提出する道もあったかもしれません。
文化系の学者さんであれば、音の分野の学者には常識の「逆位相の音をかぶせる」という常識を知らないからです。
ただし、文化系の学者に審査してもらうのであれば、文章の書き方や落としどころを変えなければなりません。

この場合は文科省の補助金ではありましたが、元科学技術庁系の補助金へ提出先を変えました。

研究計画調書を完全に仕上げてから審査希望分野を選ぶのが多くの人が行っているコトだと思いますが、
研究計画調書を組み立てる段階で「どの分野の研究者が一番評価するか」を考え、
その審査員がより心を打つような形で研究の背景や研究目的を綴っていくというのも一つのやり方です。

科研費の場合、審査員は同業者の学者である。

ということを常に念頭に置いて研究計画調書を書いてみてください。


posted by もとじむ at 2017年09月16日 last update | 研究計画調書作成のポイント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする