研究種目の選び方

科研費は全ての分野の基礎から応用までのあらゆる学術研究を格段に発展させることを目的としているため、
研究の規模や性質により、多様な研究種目から選んで申請することができます。

例えば「特別推進研究」は、新しい学術を切り拓く真に優れた独自性のある研究であって、格段に優れた研究成果が期待される一人又は比較的少人数の研究者で組織する研究計画に与えられる研究費で、科研費の中で最もハードルが高いものです。研究費も2億超え。最大5億円までです。
平成30年度公募からは、「新しい学術を切り拓く真に優れた独自性のある研究」を重点的に支援するものとして、その位置付けを明確化し、「現在の世界最先端の研究」の単なる継続・発展の支援ではなく、新しい学術の展開に向けた「挑戦性」を重視し、研究者が従来の研究活動を超えてブレークスルーを目指す研究を支援するとか。5億円程度もの「国民の税金」を投じるワケですから、よっぽどの研究内容でないと採択とはなりません。

そんな大規模な研究と実績の少ない若手研究者を同じ土俵で争わせることは公平ではありませんし、
ひいては学術研究の発展を妨げる。
研究の背景に応じて柔軟に対応すべく次のような研究種目にわけられ、研究種目ごと、さらには審査区分ごとに審査され、研究費が配分されます。

科研費の研究種目は次の通りです。 日本学術振興会のHPより一部抜粋。

1.特別推進研究、新学術領域研究
2.基盤研究(S)、基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究(開拓・萌芽)、若手研究(A・B)、若手研究
3.研究成果公開促進費(研究成果公開発表、国際情報発信強化、学術図書、データベース)
4.研究活動スタート支援、奨励研究、特別研究促進費
5.国際共同研究加速基金(国際共同研究強化、国際活動支援班、帰国発展研究)

これらの研究種目について簡単に説明します。

特別推進研究


日本学術振興会が所管している研究種目で、新しい学術を切り拓く真に優れた独自性のある研究であって、格段に優れた研究成果が期待される一人又は比較的少人数の研究者で組織する研究計画に助成されます。
研究費も2億〜5億円規模になります。
研究を遂行する能力もさることながら、研究組織をまとめたり、成果を広く世の中にアピールする力も必要になります。
書類の書き方のような小手先の力でどうにかなるような研究種目ではありませんので、割愛します。

基盤研究(S)、基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究(開拓・萌芽)、若手研究


基盤研究


基盤研究は「1人又は複数の研究者が共同して行う独創的・先駆的な研究」とあります。
つまり日本の研究機関に所属している研究者であれば誰もが申請できる最も一般的な研究種目です。
研究の規模によりS,A,B,Cに別れており、後者になるにつれ研究資金額が少なく、採択課題数も多くなります。

最も研究規模が小さいのが基盤研究(C)で研究期間は3〜5年(区分が一般の場合)。研究費総額は500万円以下です。
研究費は単に研究機材の購入費などではありません。上限の500万円以内で応募した研究課題を遂行し、完了するという意味で、
研究機材を買ったり、実験をしたり、成果をまとめて報告するところまで終わって、初めて研究が完結するという考え方です。
その一連の研究活動を3〜5年かけて500万円以内で行えるものが応募できます。
例えば、必要な機材が高額で機材費だけで500万円かかるような研究の場合は、基盤研究AやBなどの
上限額が大きなものでないと応募できません。

研究実績の少ない研究者はまず基盤研究(C)に応募し、実績を積み重ねていくことをオススメします。

壮大な研究イメージを持っていて「500万じゃ足りない!」と思う場合もあるかもしれません。
その時はその研究の一部分にスポットを当てて、研究を分割して研究計画調書を書けばよいのです。
研究総額が大きな研究種目は採択件数も少ないため、おいそれと通りません。
まずは小さな研究でコツコツと実績を積むことが大規模な研究課題を通す近道です。

ただし、実験機材が高額だったり、海外調査が必要だったり、どうしても高額な研究費が必要な場合もあるはずです。
高額な研究費を要求する場合は研究実績が積み重なっている方が「この人は結果を出しそうだ」と思わせる説得力があるのですが、
それでは自分のやりたい研究が成り立たない場合は、研究内容で勝負するしかありません。
審査員を説き伏せられる研究計画を立て、熱意と文章力で突破してください。

平成26年度公募分より、基盤研究(B)及び基盤研究(C)の審査区分として「特設分野研究」が新たに設けられました。
「特設分野研究」は、審査希望分野の分類表である「小区分」では審査が困難と思われる研究課題で、特設分野に関連する幅広い視点から審査されることを希望する応募者に開かれています。
 この応募区分により応募できるのは、基盤研究(B・C)に限られ、平成30年度は、平成28年度に設定された「グローバル・スタディーズ」、「人工物システムの強化」、「複雑系疾病論」、平成29年度に設定された「オラリティと社会」、「次世代の農資源利用」、「情報社会におけるトラスト」の6つの分野を設けています。
 採択予定課題数:分野ごとに30件程度で、分野設定年度から3年目までという期限付きです。
 各分野の設定は5年間、公募期間は分野設定初年度から3年度目までとし、公募期間初年度で応募可能な
 研究期間は3〜5年間、公募期間2年度目は3〜4年間、公募期間3年度目は3年間となります。
 基盤研究一般、海外学術調査と事なり、基盤研究(B)(C)を区別することなく審査されます。


挑戦的研究(開拓・萌芽)(旧挑戦的萌芽研究)


平成29年度公募分より、「挑戦的萌芽研究」を見直し、「挑戦的研究(開拓)」「挑戦的研究(萌芽)」として公募が行われることになりました。

以前、こちらのサイトに「科研費、挑戦的研究に積極助成 文科省が改革案(朝日新聞デジタルがH28.4.26に報道)
という記事を載せましたが、この挑戦的研究に積極助成という根拠が今回の研究種目の変更にあたります。

一昨年までに、「挑戦的萌芽研究」に応募して不採択となり、今年も再挑戦するつもりの人は注意が必要です。
去年と今年の公募要領の違いをよく確かめて見てください。

挑戦的研究(開拓・萌芽)とは


挑戦的研究(開拓・萌芽)一人又は複数の研究者で組織する研究計画であって、斬新な発想に基づき、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを志向し、
飛躍的に発展する潜在性を有する研究計画。なお、(萌芽)については、探索的性質の強い、あるいは芽生え期の研究計画も対象します。
(開拓)期間3〜6年間、500万円以上 2,000万円以下
(萌芽)期間2〜3年間、500万円以下


これまでの「挑戦的萌芽研究」に近い物が、「挑戦的研究(萌芽)」にあたり、さらにその発展系が(開拓)でしょうか。

平成30年度からの審査方法の大幅な変更により、「系・分野・分科・細目表」での審査から、「大区分・中区分・小区分」による分類と審査方法が採用されましたが、

挑戦的研究(開拓・萌芽)の場合、
 審査区分:中区分 及び 特設審査領域
 審査方式:総合審査(書面審査及び合議審査)
となりました。基盤研究(B)(C)は小区分での審査で、審査方式は書面審査のみですが、こちらは合議審査があります。

「挑戦的萌芽研究」の時代は、アイデアや高いハードルに挑戦する研究が対象で、研究の実績は問われませんでした。
実績が関係ないので研究業績を記載する欄がなく、応募書類のページ数が圧倒的に少なかったので、
所属研究機関に「全員応募!」と強制され、嫌々応募書類を書いているような先生はこの研究種目に応募しがちでした。

研究業績と称する著書や論文を記述する欄はなくなりましたが、「応募者の研究遂行能力」などの記述が求められ、
これまでの研究活動とその成果の具体的な内容について記述することになっています。
ただし、学者としての実績や、応募課題の構想に直接関係なくても、本人の実行力を示せることを自由に書いてもよいようです。
ただ、学会発表や論文執筆の実績を羅列するよりよっぽど難しく、冷やかしの応募も少なくなりそうな気配。

その他の特徴としては、

■採択予定課題数は(開拓)は250件程度を上限、(萌芽)は予算の状況によって1,000件程度。

■挑戦的な研究課題を支援する観点から応募額を最大限尊重した配分(特に(萌芽)については、応募額の100%を基本とした配分)を行うとのこと。

科研費に採択されても研究費は減額されるのが常ですが、この種目に関しては減額率がかなり低くなりそうです。
その分、応募もさることながら審査する方も難しそうですね。
この改変の結果が出るのは何年も先でしょうから、いい方向に変革することを願いたいところです。


若手研究


若手の研究者が一人で行う研究が応募出来る種目です。
研究実績を積み重ねているベテラン研究者の実績比較されることがなく、実績の少ない若手だけがライバルになるため、
若手研究者であればなるべくこちらに応募されることをオススメします。

ただし、平成30年度公募分から、この「若手」という考え方が大幅に変更となります。
ただ年齢で若手研究者とするのではなく、博士号取得後の経過年数で若手かどうかを判断します。

若手研究者のキャリア形成に係る多様なニーズに的確に応えるため、従前の「39歳以下の研究者」という年齢制限から「博士の学位取得後8年未満の者」という学位取得後の年数による制限に変更。

【平成30年度公募における対象】
平成30年4月1日現在で博士の学位を取得後8年未満の研究者(※)が一人で行う将来の発展が期待できる優れた着想を持つ計画。
なお、3年程度の経過措置として、平成30年4月1日現在で39歳以下の博士の学位を未取得の研究者が一人で行う研究計画も対象とする。


研究歴が浅い若手研究者のために研究実績がなくても専門性や実力をアピールできるように
研究の経歴を記載出来る欄があるのが特徴です。
審査員は、研究内容等を見た後に”その研究を遂行する能力があるかどうか”を判断するために研究実績を確かめますが、
若手にはその実績があまりありません。
そこで学位を取った時の専門などを確認することで研究活動の実績を補って判断されます。

勿論、最初から若手枠にとらわれず、基盤研究などの研究種目に応募することも可能です。
また、若手が一人で行う研究が対象なので、共同研究者がいる場合はこの研究種目に応募できません。

なお、平成22年度より、若手研究には受給回数に制限がかかりました。
これまでに公募があった研究種目、若手研究(S・A・B)と今回の若手研究のいずれかにおいて、2回までです。
若手枠である程度の実績を積んだ研究者はベテランと同じフィールドでがんばりなさい。
その分、研究実績がない若い子にチャンスをあげましょう。ということでしょうね。理にかなってますね。

しかし、今回の見直しで、「あれ?博士号の学位ないひとはどうなんの?」とちょっとびっくりしました。
文化系の場合、博士課程を取得して折らず、満期退学の先生って結構いらっしゃるからです。
博士号を取得してないと研究者として認めないっていう風潮になっているんかなぁとちょっと考えさせられました。

研究成果公開促進費(研究成果公開発表、国際情報発信強化、学術図書、データベース)


これまでに科研費やその他の研究費によって行ってきた研究成果を広く世の中に知らしめるために必要な経費を助成する物です。
基盤研究などと同時期に応募することができます。

研究活動スタート支援、奨励研究、特別研究促進費


これらの研究種目は特別な条件下に置かれた人を対象にしたりするもので応募出来る人は限られています。
研究活動スタート支援は研究機関に採用されたばかりの研究者や、育児休業等から復帰する研究者等が一人で行う研究が対象です。
奨励研究は教育・研究機関の職員、企業の職員等、研究を主たる業務としていない人が行っている研究が対象。
特別研究促進費は緊急かつ重要な研究課題への助成。何らかの突発的な事象がが起こった時に必要に応じて募集されるものです。

特定奨励費、特別研究員奨励費、学術創成研究費 


順番に、学術研究諸団体が行う学術的・社会的要請の強い特色ある研究事業、
日本学術振興会の特別研究員が行う研究に配分されるもの、特別に重要な研究課題に推薦制で配分されるものです。

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以上、学振のHPや公募要領に書いてあることを多少補う形で説明を入れました。

基本的に研究費の総額が少ない研究種目ほど、応募人数も採択人数も多いです。

研究費を多く要求すればするほど、それだけその研究の必要性や成果を期待されますので、
より説得力のある研究計画を立てる必要がありますし、ライバルもなかなかの強者が集まります。

実績が少ない研究者の方は、まずは500万円以下の研究計画から始めるとよいと思います。
特に若手は若手だけで争える研究種目が絶対に有利です。
1人でやる研究といっても、1から10まで一人でやらなきゃいけないわけではありません。

大学院生に研究補助をしてもらったりということは可能ですし、公募条件の範囲内で、
もっとも自分が研究をしやすい形でうまく着地することを目指してみてください。


posted by もとじむ at 2017年09月23日 last update | 研究計画調書作成のポイント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする